有機物リサイクルシステムで持続可能な社会を
正和電工株式会社
自然の力で分解できない大量の糞尿は土壌汚染、そして環境破壊へとつながります。正和電工のバイオトイレシリーズはこうした問題の解決に取り組みます。 バイオトイレBio-Luxイメージ バイオトイレBio-Lux国土交通省認定・新技術NETIS No.HK040017-A
   
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 >>「廃棄有機物の分解処理装置の開発」 『発明と生活』2006年8月号 優秀発明発表会3より
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究極の循環型「バイオトイレ」に世界が注目
聞いて流せぬトイレの話(土木学会誌より)
廃棄有機物の分解処理装置の開発
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「廃棄有機物の分解処理装置の開発」

優秀発明発表会3 第31回発明大賞日本発明振興協会会長賞受賞 正和電工(株)代表取締役社長
廃棄有機物の分解処理装置の開発
橘井 敏弘
正和電工(株)代表取締役社長

はじめに

 廃棄有機物の分解処理装置で「オガ屑を用いた乾式し尿処理装置」を開発した。水を用いないトイレ、すなわちドライトイレットである。この廃棄有機物の分解処理装置は「バイオトイレ」と総称されることがある。本装置の正和電工製は、商標を「バイオラックス」とし、登録を済ませている。
 本乾式し尿処理装置は、オガ屑の有する固有の特質(多孔質、粒径、高空隙率、高水分保持能、低比重、高比表面積、高水分蒸発能、高耐摩耗性、高抗バクテリア性、生分解性)を利用して、悪臭の発生なしに、し尿を減容化する装置である。 し尿に含まれる固形分はバクテリアによって炭酸ガスと水とに分解され、最終的にフミン質と無機成分とがオガ屑中に残る。これら分解残渣は、良好な有機肥料・土壌改良材として土壌に還元される。
 本乾式し尿装置の特徴は、(1)水を使わない、(2)臭わない、(3)し尿が資源化される、(4)生ゴミの処理も行える、(5)水環境の保全に貢献、(6)取り付け簡単、(7)移動可能、(8)イベント時や災害時に強い、(9)ベッドの脇に置ける、(10)水洗トイレ方式に比べ安価、などの諸特性を有する地球環境に優しい21世紀のトイレである。
 本装置の研究開発に当初から参画し、本装置の有効性を学術的な観点から裏付を行い、協力して戴いている、北海道大学大学院教授の寺沢実博士に感謝の意を示したい。

水洗トイレの問題点

 し尿処理の方法として、上水通水を運搬手段として用いた従来型の水洗トイレの今後の拡大普及は困難である。財政上の問題、水不足の問題、環境保全上の問題などか山積しているからである。
 近年、水の環境問題も注目され、水の大量使用、水の大量汚染、汚水の大量廃棄が指摘されている。加えて、下水管路老化による漏水、下水処理場の浄化能力低下、高い維持管理コスト等である。
 297の市町村が、下水道工事を完備したが、ダムの建設が遅れているため、水を確保できず、水洗便所が使えないと訴えている記事が新聞で報道された。
 また、合流式下水水処理システムが、全国にまだ50%以上あり、大雨などの際には下水処理場で処理されることなく河川へ直接放流され、生活排水の垂れ流しも水質汚染の原因となっている現実も報道されている。

し尿処理を水洗式から非水洗式へ転換

 下水道へ流れ込む水の流れに、し尿を含む水洗トイレの汚水(ブラックウォーター)を混入させなければ、台所、洗濯機、風呂場からの水(グレイウオーター)の処理は比較的容易に出来る。
 ゆえに、し尿処理を独立分離させることで下水処理場の負担を軽くすることが可能となる。
 すなわち、し尿処理方式を水洗式から非水洗式「ドライトイレ」に変換する考え方である。

バイオトイレは「トイレの総称」

 バイオトイレには、“生物の力でし尿を処理すること”の意味を託している。
 したがって、現行の水洗トイレも、オガ屑やチップを用いたドライトイレも、水循環式トイレも、すべてがバイオトイレの範躊にあり、トイレの総称となっている。
 バイオトイレ「バイオラックス」は、オガ屑を人工土壌マトリックスとして利用した乾式し尿処理装置であり、「資源化エコ・バイオトイレ」、略してバイオトイレと仮称している。富士山の頂上・8合目・5合目やサハリンの天然ガス開発現場、南極昭和基地、旭川の旭山動物園、各地の公園、工事現場などで活躍中であり、既に1,400台以上が生産されている。

バイオトイレ「バイオラックス」の特色

 バイオトイレの特色は「し尿処理」に「水を使わない」ことにある。ゆえに(1)水を使わない(省エネ・水環境の保全に貢献)、(2)臭わない(快適空間の創造)、(3)くみ取り不要(省エネ・無臭)、(4)し尿が資源化される(資源循環・バイオマス廃棄物の資源化)、(5)生ゴミを同時に処理できる(複合処理)、(6)水環境の保全に貢献(環境浄化)、(7)取り付け簡単(簡便性)、(8)移動可能(広域利用)、(9)イベント時や災害時に強い(備蓄・レンタル対象)、(10)ベッドの脇に置ける(介護用・高齢者社会への対応)、(11)水洗トイレ方式に比べ安価(省エネ・インフラ投資の軽減)、(12)病原菌などの死滅(安全性)などの諸特性を有する地球環境に優しい21世紀のトイレなのである。


150万人のし尿処理は非水洗便所

 水を使わないので、極寒の血、冬の旭川でもトイレ使用が可能である。バイオトイレの導入に踏み切った旭山動物園は、冬期間の水道凍結の問題から解放され、冬期間も開園が可能となった。部  また、ユニークな野生動物の行動展示等の工夫から入園者が増え続けており、平成16年度は144万人が訪園した。平成17年度の夏季の入園者数は、昨年度の同時期に比べて更に増加した。旭川市の人口が35〜36万人であるから、この数字大きさが分かる。
 人が集まれば、すぐに困るのはトイレである。この入園者の急増を陰で支えているのが、30台強のバイオトイレであり、150万人分のし尿を無臭の内に、水環境に負担をかけない処理をしている。

し尿処理のポイントはオガ屑

 本装置のし尿処理のポイントは、臭気の発生をさせずに、如何に迅速に水分を蒸発させるかにある。オガ屑を用いると、なぜし尿は臭わないのか。
 その答えは、オガ屑が、し尿を保持しつつ好気的条件を維持するのに適した性質を有することにある。し尿の95〜96%は水分である。空気中の酸素は水に溶けづらい。したがって、スラリー状態のし尿混合体は、嫌気状態にある。嫌気状態では、糞に含まれていた嫌気性バクテリアがスラリー中で増殖し酵素ウリアーゼを生産する。このウリアーゼが尿中に含まれていた尿素を効率的に分解して、炭酸ガスとアンモニアを生成する。
 くみ取り式のトイレの臭さには閉口するが、この臭さは、糞と尿とが同じ容器で混合・貯蔵されることに起因する。糞と尿とを別々に集めると臭気の発生は少ない。また、糞と尿とを混合しても、オガ屑中であれば臭わない。オガ屑の好気的条件下では、嫌気性の腐敗菌は繁殖できず、嫌気性菌や好気性菌の増殖が促進され、尿素の分解によるアンモニアの生成が大幅に抑制されるからである。

水で薄めて廃棄から水分の蒸発除去へ

 し尿の大部分は水分であるから、臭気の発生を抑制しつつ水分を飛ばすと、バクテリアで分解すべき対象の固形分は、たかだか2〜10%に過ぎない。もともと水っぽいし尿を、その50倍以上の水道水で下水処理場に運搬する水洗トイレは、希釈・排棄気型トイレであると言え、水資源が不足気味な昨今では再考の余地がある。
 地球規模での水資源の保全を考えるとき、水を使わないトイレは、時代の要請でもある。オガ屑は、臭気を発生させずにし尿から水分を蒸発除去するのに優れた資材であり、濃縮・資源化型の乾式トイレの主役である。21世紀はバイオトイレの需要度、重要度が高まるであろう。

オガ屑の特性を検証

 オガ屑が臭気を発生させずにし尿から水分を蒸発除去するのに優れた資材であると述べた。その理由を解明するために、オガ屑の特性を検証する。
 オガ屑を使用すると、臭気なしに、し尿の処理が可能となる。まず、その理由の第1は、何と言っても、オガ屑の好気的条件保持能の高さである。
 オガ屑は、構成粒了自身が多孔質であるとともに、一定容積の入れ物に入れられた場合にその粒子と粒子との間に多大な空隙が出来上がる。
 この空隙率の高さこそが、オガ屑の一大特性である。一定容量のおがくずの85〜90%が空気であり、実質は10〜15%に過ぎない。これは、一般的にあまりよく知られていない事実で、聞くと誰もが、えっと驚く。これは、トドマツのような材料では、粒子の大きさによって変化がない。一般的には、粒径の減少に伴って空隙率は減少するのに対して、かなり特有な性質である。
 このふかふか状態のオガ屑に、ゆっくり水を加えていき、下から水が漏れてくる直前で止める。この時どれほどの水が保持されるか?オガ屑の容量の30〜35%に相当する水が保持される。水分保持能は30〜35%であると言う。そのとき、系内の残りの50〜60%は、依然として空気である。オガ屑中の水は、もはや液体状態では存在せず、オガ屑の粒子表面や細孔中に薄くフィルム状に広がった状態になっている。
 であるから、し尿をオガ屑に加えて静かに攪拌すると、し尿中の水分はオガ屑中に広がり、固形分はオガ屑の粒子表面に付着した状態になり、系内の空気に触れる状況が生まれる。このような状況下の有機物は、好気性バクテリアによって分解されることになる。
 このオガ屑の水分保持能は、粒子の大きさによって変化し、粒子の大きさが80メッシュをパスするような小径になると、水分保持能が急激に上昇し空隙の全てに水分が入り込み、空気の存在する余地を残さない。従って、細かすぎるオガ屑のみではマトリックスとしては使えない。しかし、その存在量に比例して、全体のオガ屑の水分保持能を上昇させることが出来る。
 いずれにしても、オガ屑は、基本的には好気的条件を保持しつつ、好気性バクテリアにその活躍の場を提供する優れた材料なのである。

オガ屑の大きい比表面積

 オガ屑の特性は、その比表面積の大きさである。オガ屑の表面からは水分が蒸発し易い。バイオトイレは、間歇的にオガ屑をゆっくりと攪拌しており、攪拌されると底の方にあった水分の多い部分のオガ屑が表面に現れて来る。表面に出てきた水分は、オガ屑の表面から蒸散する。
 絞ったままの洗濯物は乾きにくいが、広げてやると乾きが速い。攪拌はこの洗濯物を広げるという行為に類似する。水分が蒸発すれば、系内はさらにより好気的条件になる。もちろん、攪拌はオガ屑に新たな空気の導入を促す効果もあり、全体として系内を好気的条件に保つのに貢献する。

オガ屑中のリグニン

 オガ屑中にあるリグニンの存在が、オガ屑の物理的磨耗抵抗性を付与している。また、リグニンは難分解性の天然高分子で、化学反応に強く抵抗し、また、天然界にあっては、バクテリアはほとんどリグニンを分解することか出来ない。抗バクテリア性能が高い。そのため、オガ屑に混ぜられた易分解性の有機物は、好気性バクテリアによって効率よく分解・消滅されて行くが、マトリックスとしてのオガ屑はいつまでもその形状を変えることがない。
 このように、オガ屑は、リグニンの存在によって、マトリックス材料としてバクテリアに抵抗し、かつ攪拌下での摩耗にも耐えるので、長期間使用することが可能となる。

オガ屑の小さい見かけ比重

 オガ屑は見かけ比重が小さい。先に、おがくずの85%〜90%が空隙であると述べたが、この空隙率の高さは、見かけ比重を小さくすることに通じる。
 オガ屑が軽い材料であることは、オガ屑を攪拌する際の動力を軽減してくれる効果があり、比重の大きいセラミック材料などを攪拌するときの動力に比べれば雲泥の差である。

オガ屑の生分解性

 オガ屑はリグニンも含めて、生分解性の天然高分子材料である。バクテリアにはめっぽう強いオガ屑であるが、キノコの仲間である担子菌類の攻撃には弱い。
 バイオトイレで使用したあとのオガ屑は、土壌に戻すことで、蓄積したミネラル類は肥料となり、オガ屑は担子菌やミミズなどの上壌生物の餌となる。ミミズの糞は最高の土壌改良剤である。このようにオガ屑は植物の生育に適した土壌環境を作る資材として、最終的に環境に戻すことが可能である。ここに物質循環が完了する。
 オガ屑を畑に人れると良くないと言われるのには理由がある。それは、オガ屑それ自身には窒素、燐、カリなどの無機栄養素がほとんどないことが原因である。新しいオガ屑を土壌中に人れると、これを分解するために担子菌やバクテリアが、周囲の土壌から窒素、燐、カリなどの栄養素をかき集める。そのため、植物が、栄養不足となって育たないような状況が生まれる。
 しかしながら、バイオトイレから出た使用済みのオガ屑には、窒素、燐、カリなどの栄養素がたっぷり蓄積しているので心配はない。むしろ、栄養分が濃すぎないように希釈して施肥する必要があるくらいである。

トイレ室内の空気の流れ

 ところで、我々がアンモニアを嗅覚で感じる濃度の臭値は20ppm前後である。従って、20ppm以下の濃度のアンモニアは、存在してもほとんどの人が、臭気として感じることがない。バイオトイレには排気口に電動ファンがセットされている。そのため、トイレ内の空気は、上から下へと流れ、部屋の空気は便器の中へと流れ込み、最終的に排気口から排出される。
 従って、構造上、トイレ内では、たとえ臭気があったとしても、臭気は鼻に向かって移動しない。目隠しをされて連れて行かれれば、恐らくそこがトイレとは気がつかないであろう。
 また、排気□のアンモニア濃度が、20ppm以下であれば、バイオトイレの周辺では、アンモニアの存在に気がつかない。反応層内ではアンモニアを生成しているバイオトイレも、流れる空気に希釈されて、あたかもアンモニアを生成していないかのごとく振舞う。それでも実用レベルでは、なんら問題はなく、多くの方々が、臭いが無くて快適だとアンケートに答えている。

し尿とオガ屑の量比

 糞のみだと、大体20〜25倍の容量のオガ屑があれば順調に分解が進む。糞に尿が加わったし尿混合物では、これが80倍になる。糞と尿の重量比は1:10で、約10倍である。しかしながら、200〜250倍のオガ屑を必要としない。
 これは、尿が5%しか固形分を含まない液体であることが原因である。少なくとも、処理対象し尿の80倍容量のオガ屑があれば、稼動初期のアンモニアの生成を、とりあえず我々が臭気として感知する臭値である20ppm以下の濃度に抑えることが出来る。

オガ屑中の酸性官能基

 オガ屑が、なぜアンモニアの揮散を低濃度で抑えるのか。オガ屑中に存在する酸性官能基類がアンモニアの揮散防止に一役買っている。すなわち、タンニンなどのポリフェノールのもっているフェノール性水酸基、ペクチン質などがもっているカルボキシル基、フェノール酸などがもっているフェノール性水酸基とカルボキシル基、リグニンのフェノール性水酸基、フミン質のカルボキシル基などの各種の酸性官能基が、アルカリ性であるアンモニウムイオンをトラップするという能力を発揮する。
 バイオトイレの稼動初期は、アンモニアの揮散がほとんどない。むしろ、オガ屑が含む抽出成分の影響が出ることがある。熱帯産の木材のオガ屑では、強力な生物活性を有する抽出成分が、バクテリアの繁殖を抑制することがある。日本産でもヒノキ、ヒバ、クスノキなどは、要注意であるが、これらの純粋なオガ屑を得ることの方がむしろ難しい。一般的に言って、問題は少ない。

ウリアーゼ活性の低下

 オガ屑は、アンモニアの生成を抑える事も実験で分かってきた。オガ屑が存在すると、水中での反応に比べてウリアーゼの尿素分解速度が低下する。オガ屑の存在がウリアーゼの反応を抑制するようである。緩衝液を用いると、オガ屑の有無での反応の差はさらに顕著になり、アルカリ側に行くほど反応が急激に落ちる。これは、ウリアーゼの至適pHが6.0付近に存在するためである。しかし、逆にアンモニアの揮散は、アルカリ側で激しくなる。オガ屑のアンモニア生成・揮散の抑制力も、大量の尿を短期間に投入されると、その能力を超える。オガ屑の能力にも限界が存在する。アンモニア臭を20ppmに抑えるには、し尿の80倍のオガ屑容量が必要である事が、その事を如実に示している。
 バイオトイレは、少しずつ連続的にし尿か投入されることを設計の基本としている。稼動の経過とともに、1日のし尿の役人量と、1日の水分の蒸発量および固形分の分解量との和が平衡状態になること、アンモニアの発生・揮散とがあるレベル以下に保たれることなどが期待されている。
 この様にバイオトイレは、限界あるオガ屑の能力を巧みに利用して、臭いを感じさせずに、し尿の資源化のために、けなげに稼動していることになる。

バイオトイレは水分蒸発装置

   バイオトイレの装置を大きくすると、家畜糞尿の処理装置となる。やはり、オガ屑を人工土壌マトリックスとして使用している。
 水分の蒸発量の多さを見ると、バイオトイレも家畜糞尿処理装置も、し尿や糞尿を微生物分解処理する装置と言うよりは、水分を蒸発させる装置であると考えた方がよいくらいである。
 蒸発水を回収するような冷却装置を取り付けると、水がトン単位で回収できる事になる。水の少ない地域に行けば、この回収水は貴重な水資源となる。

オガ屑の需要は林業活性化につながる

 オガ屑の能力が広く認識され、生ゴミ、屎尿、家畜糞尿が資源化処理に各地で利用されると、オガ屑が大量に必要になる。
 オガ屑の販売、生産に関する事業が広がり、オガ屑の材料となる間伐材が役立ち、山を育てる事業が期待できる。建築資材、古木等の有効利用も可能となる。
 地域ごとにオガ屑や使用済みのオガ屑の集積地を作って、状況に対応する必要が出るであろう。農林水産、畜産関係のバイオマス廃棄物は、有用な資源に変換する事が可能となり、オガ屑を地域ごとに集積する新事業も生まれることになる。

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