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北海道新聞に弊社が掲載されました 2021.11.29

道産技術で水を守る旭川正和電工・バイオトイレ「SDGs持続可能な未来へ」

 社内のトイレは使用するとき以外、扉を開けたままだ。旭川にある正和電工の橘井敏弘社長(74)は「無臭なので開けっ放しで大丈夫」と話す。普通のトイレではない。同社が製造販売する「バイオトイレ」だ。
 便器はおがくずの入った便槽につながり、使用後は水を流す代わりに、おがくずをかき混ぜる電動スクリューのスイッチを入れるだけ。し尿の90%は水分のため、ヒーターで暖められて蒸発する。残った有機物は、おがくずの微生物が分解、無臭化する。
 年に2~3回、おがくずの交換が必要だが、使用済みのおがくずは有機肥料として活用できる。下水の設備が不要で、地下水や川などを汚すこともない。

 1974年創業の正和電工は、照明器具の小さな卸問屋だった。商品をテレビや暖房器具などに拡大し、94年にバイオトイレの取り扱いを開始。しかし直後に取引先の製造会社が倒産したため、権利を買い取り自社で製造販売を始めた。改良を重ね、今では年商3億6千万円のうち、半分をバイオトイレ関連が占める。

 海外への発信に力を入れ、2013~18年は外務省やJICAの委託で、ベトナムでバイオトイレの普及・実証事業を実施した。
 ベトナム北部の世界自然遺産、ハロン湾の観光船や一般住宅などに約50台を設置。この実績から同社への視察が増え、海外50カ国以上から受け入れている。
 今も途上国を中心に多くの人が、安全に管理されたトイレを使用できていない。ただ、途上国で水洗トイレを普及させるには、下水道や水を確保するダムの整備など、多額の投資が必要で、普及の大きな壁となっている。下水管や下水処理場には多額の維持・管理費がかかり、停電や断水が起きれば使用できないという欠点もある。
 橘井社長は「おがくずは間伐材を利用でき、ふん尿は有機肥料に生まれ変わる。SDGsの目標を知った時、バイオトイレの時代が来たと感じた」と話す。とはいえ、バイオトイレは大量生産できるほどの需要がなく、家庭用で1台約100万円と高価になる。橘井社長は、衛生的なトイレ環境の整備を進める中国やインドの政策に注目しているという。「国が公共事業として導入を決めれば、現地で生産できて急速に広がるだろう。持続可能なバイオトイレの普及率が、文明の新たなバロメーターになる」と期待する。